2004/4/4発売

  1. Peace Of Mind / NAHKI
  2. Move It Up / MACHACO
  3. 時の流れ / B-Ninjah
  4. 風来防~POOH太郎 / Junior Dee
  5. Movin’ / MACHACO & Atooshi
  6. Movin’ (Version) / Steely&Clevie
  7. A Yah Wi Deh / NAHKI
  8. Rule My Destiny / MACHACO & B-Ninjah
  9. 眠れる獅子 / U-Dou & Platy
  10. Don’t Worry, Take It Easy / ZEBRAMAN & WONGGY
  11. Arena / Atooshi
  12. Arena (Version) / Steely&Clevie
  13. Movin’ (In Di Mix) / NAHKI, MACHACO, B-Ninjah, Junior Dee & Atooshi
  14. Mix In Di Arena / NAHKI, MACHACO, B-Ninjah, U-Dou, Platy, ZEBRAMAN, WONGGY & Atooshi

“尾張名古屋の導き星”として、名古屋弁丸出しのMC(名古屋弁とパトワが似ていると思うのは筆者だけか?)と確かなセレクションで、日本全国のレゲエ・ファンから熱い支持を集めるガイディング・スター。「芸所」と呼ばれつつも、逆にあまりにシビアな土地柄ゆえか、音楽文化が育ちにくいと言われる名古屋を拠点に、ジャマイカ直系の”最小のメディアにして、最大のエンタテインメントを生み出す”サウンド・システムで、レゲエとそのカルチャーを地道に伝え続けてきた、日本屈指の老舗サウンドである。

昨今、何かとメディアや音楽業界で注目を集める日本のレゲエ・シーンだが、この「シーン」は日本各地でスピーカーを鳴らし続けるサウンド・システムのカルチャーを中心に沸き起こったムーヴメントが核であり、各サウンド・システム/地域同士のリンクと協力によって、成り立っているものである。現状のシーンの盛り上がりを見ていて、幸福に感じられるのは、大手メディアや音楽業界によってシーンが歪められること無く、そのままのカタチで広く伝えられているというコトだ。それはジャマイカのヤード向けに歌ったショーン・ポールの曲がそのままのスタイルで世界を制覇してしまったのに通じる痛快さがある。日本のレゲエを一過性の「ブーム」と捉える輩も居るかもしれないが、そのリアルな成り立ち、強固な礎を知れば、そう簡単にはいかないと理解できるハズ。そして、ガイディング・スターはこのシーンの創成期から、シーンがシーンで無かった時代から、レゲエ不毛の地(筆者も名古屋出身であるからこれはハッキリと言える。名古屋はヤンキーと暴走族とヘビ・メタとパンクとドラゴンズ・ファンは大量に存在し、ジャマイカ人並みにシニカルでクールな口の悪い暴れん坊はワンサカいたが、レゲエの臭いは全く無かった。関係無いけど、原爆オナニーズ、どえりゃーリスペクト!)で、地道にレゲエとそのカルチャーを伝え続け、名古屋を現在、大阪や横浜に負けない”レゲエ・タウン”にするのに多大に貢献してきたのである。その活動が東海地区は勿論、非レゲエの全国の街のレゲエ小僧達に与えた影響と勇気は測り知れない。シーンはこうしたパイオニア達の背中を見て拡大していく。だから、ファンはガイディング・スターを支持する。リスペクトするのだ。

〈STARS’ ARENA〉-ガイディング・スターの”リメイク”トラックをテーマにしたレーベル。ジャマイカから日々生まれる最先端のトラックが流行を生み出すシーンにおいて、一見逆行した動きに見えるかもしれないが、この過去の音源を現在に焼き直す作業がこれまでレゲエを前進させる大きな原動力となってきていることは、レゲエ・ファンなら知っているハズだ。オリジナルを新たな解釈で再生させることで生まれる新しさ、このセンスをジャマイカ人、レゲエ・ファンは「粋」と呼ぶ。だが、ゆえにそのオリジナルに対する理解力は求められ、それはサウンド・システムの現場でのセレクション同様、決してハズしてはならない肝なのだ。しかし、前作、そして今作を聴いて分かる通り、ガイディング・スターは、その長くレゲエと真摯に向き合い、サウンド・システムの現場に立ち続けることで修得・会得した全てを持ってそのハードルを軽々と乗り越えてみせた。

ガイディング・スター/〈STARS’ ARENA〉がこの「リメイク・トラック」の手法を選択したことを嬉しく思う。それは、レゲエへの長い深い愛情無くしては実現できないものであると同時に、現場に立ち続ける現在のシーンを生きる者達でなければ説得力を持ち合わせないやり方であり、「最先端」を模索し、加速し続ける日本のレゲエ・シーンの中での自らのポジションとその役割を十分に理解した、ストレートに彼等らしい作品だからだ。ガイディング・スターだから提示できる”リメイク・トラック”という「最先端」とは対極の「新しさ」。そこが良い。そして、こうした作品が登場したことに、現在のシーンのキャリア、成長、懐の深さを見る。

今後のガイディング・スター/ 〈STARS’ ARENA〉 の活躍、日本のレゲエシーンを牽引し続けるそのさらなる活動に期待したい。

八幡浩司(24×7レコード)2004春